ケース・コホート研究 Case-cohort study
定義
ケース・コホート研究(Case-cohort study)は、コホートの中で行われるケース・コントロール研究の一種である。予め定義されたコホートにおいて、コントロール(後にケースになる人も含む)をコホート全ての構成員から観察開始時にランダムサンプリングし、ケースはイベントを発生した全例(コントロール内でイベントを発生した人も含む)とし、曝露オッズ比を推定する。サンプリングされたコントロールは「サブコホート」と呼ばれ、複数のイベントの評価に単一のサブコホートを使うことが可能である。
ケース・コホート研究は、コホート全ての構成員から情報を取得することが金銭的や労力的に難しい場合(例えばバイオバンクを用いたコホート研究で高額なバイオマーカーやゲノムを測定する場合など)に、効率が良いため用いられることが多い。また、下記の実例のように、一次データ収集を伴う前向き薬剤疫学研究でも用いられることがある。
実例
日本の68病院で2008年1月から2010年7月までの新規スタチン使用者6,877人を対象コホートとし、各種スタチン(プラバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)と副作用(腎臓、肝臓、筋のイベント)の関連を評価した。種々のアウトカムを生じたケース(血清クレアチニン上昇58人、血尿83人、蛋白尿21人、肝酵素上昇54人、クレアチンキナーゼ上昇2人、横紋筋融解1人)に対し、サブコホートとして(コホート全ての構成員から観察開始時に)551人のコントロールをサンプリングし、曝露オッズ比(リファレンス群: プラバスタチン)を求めた。各種スタチン(対プラバスタチン)と各副作用の組み合わせすべてに有意な関連性を認めなかったが、アトルバスタチン(対プラバスタチン)およびフルバスタチン(対プラバスタチン)とクレアチニン上昇との間の点推定値は2.5程度であり(調整後の曝露オッズ比は2.38[95%信頼区間(95% CI), 0.92–6.17]および2.68 [95% CI, 0.73–9.79])、さらなる検討を要すると考えられた。
参考資料
- 久保田潔. 研究デザイン 3 分析疫学的研究 4 ネステッド・ケース・コントロール研究とケース・コホート研究. In:景山茂, 久保田潔 編. 薬剤疫学の基礎と実践. ライフサイエンス出版, 2021. p.176–7.
- Ooba N, Sato T, Wakana A., et al. A prospective stratified case-cohort study on statins and multiple adverse events in Japan. PLoS One 2014; 9: e96919.
- 野間久史. ケースコホート研究の理論と統計手法. 統計数理. 2014; 62: 25–44.
- Japanese Society for Pharmacoepidemiology. Japan statin studyについて: スタチン系薬剤に関する薬剤疫学研究. Japanese Society for Pharmacoepidemiology. Accessed March 21, 2025. https://www.dsrujp.org/jss/about.html.